定年後の仕事ストレス実態と低負荷職の選び方

作業服からスーツ姿へと成長していく男性が上昇する矢印の上を進み、転職によるキャリアアップと収入向上を象徴するイラスト

定年後も働く選択をする人が増える中、豊かな暮らしを実現するための仕事選びが注目を集めている。物価上昇や年金支給額の実質的な目減り傾向を背景に、65歳以降も無理なく働ける職種についての関心が高まっている。リクルートワークス研究所の研究員が実施した調査では、定年後の仕事における収入とストレスの関係が明らかになった。

11月30日に公開されたインタビュー記事では、高収入でもストレスが高い職種と、収入は控えめでもストレスが少ない職種の実態が詳細に報告されている。キャリアと健康のバランスを重視する新しい働き方の選択肢が、定年後の人生設計における重要な視点として浮かび上がっている。

この記事で得られる情報

定年後の仕事でストレスが高い職種 事務職と営業職の実態

■ 定年後の仕事におけるストレス調査の概要
項目 内容
調査実施 リクルートワークス研究所
調査対象 65歳以上の就業者
公開時期 2024年11月30日
調査責任者 研究員・アナリスト
主な発見 高齢期の就業者は現役世代よりストレスが少ない傾向
ストレス高職種 事務職、営業職
ストレス低職種 警備員、調理、清掃員
関連書籍 『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』

事務職が示す”高収入・高ストレス”の構造 週35〜42時間労働が36.1%

リクルートワークス研究所が実施した調査により、定年後の仕事の中で最もストレスが高い職種は事務職であることが判明した。研究員によれば、事務職のストレスの主な要因は、仕事の難しさと複雑な人間関係の多さにあるという。事務の仕事は「頭を使う」割合や「ほかの人と一緒に行う」割合が高いというタスク特性を持つ。この特性が、定年後の就業者に精神的な負荷をもたらしている。

事務職の労働時間の実態も、ストレスの高さを裏付けている。フルタイムに近い働き方をする傾向があり、週に35〜42時間働く人が36.1%と最も多い割合を占める。この労働時間は現役世代とほとんど変わらず、定年後の仕事としては長時間労働の部類に入る。勤務時間の長さは、身体的な疲労だけでなく、精神的なストレスの蓄積にもつながっているとみられる。

収入水準の高さも事務職の特徴である。平均年収は237.9万円に達し、定年後の職種としては高水準となっている。さらに注目すべきは、年収500万円以上を稼ぐ人が9.9%も存在する点だ。しかし研究員は「高収入を維持するには相応の負荷が伴う」と指摘する。収入の高さとストレスの大きさは表裏一体の関係にあり、金銭的な豊かさを優先するか、心身の健康を重視するかの選択が求められる。

最新のデジタルツールへの対応も、事務職のストレス要因となっている。高齢になると新しい知識へのキャッチアップが難しくなる側面があり、これが精神的な負担につながる可能性がある。現役時代のスキルを活かせる一方で、テクノロジーの進化に追随する必要性が、定年後の就業者にとって大きなプレッシャーとなっている。

今後の展望として、AIの発達によって事務職の需要が減っていくと考えられている点も無視できない。研究員は「同じ仕事をずっと続けられる人は割合としては少ない」と述べ、事務職として長期的に働くことの難しさを示唆している。人事制度によっては長く働ける環境もあるが、現役からのスキルを引き続き活かしていきたい人に限られた選択肢となっている。

営業職の「成果・ノルマ」プレッシャー 平均年収373万円の代償

事務職に次いでストレスが高い職種として、営業職が挙げられる。営業職は働く場所や時間の自由度が高いという利点がある一方で、「頭を使う割合」と「ストレス」がいずれも高いというデータが出ている。この矛盾した特性が、営業職の複雑な実態を物語っている。

営業職のストレスの最大の要因は、成果・ノルマへのプレッシャーである。アンケート調査では、仕事の悪い面として「常にノルマとの戦い」など、ストレスやプレッシャーを挙げる人が非常に多かった。定年後であっても数字による評価から逃れられない現実が、精神的な負担となっている。年齢を重ねても成果を求められる厳しさは、心身の健康に影響を与える可能性がある。

営業職の平均年収は373万円で、調査対象の職種の中でダントツに高い水準となっている。この高収入は、定年後の生活を経済的に安定させる大きな魅力である。しかし研究員は「相応に大変さがある」と指摘し、高収入の裏にある労働負荷の大きさを強調している。収入の高さは、それだけ企業側が期待する成果も大きいことを意味している。

営業職のもう一つの特徴は、現役の頃からの経験を活かして仕事をする側面が強いことである。このため、定年後に新たに営業職を始めるのはハードルが高いと研究員は述べている。業界知識や人脈、営業スキルなど、長年の経験で培ったものが求められるため、未経験者には門戸が狭い職種となっている。

■ 高ストレス職種と低ストレス職種の比較
比較項目 高ストレス職種(事務・営業) 低ストレス職種(警備・調理・清掃)
労働時間 週35〜42時間(フルタイム傾向) 短時間・シフト制が中心
平均年収 事務237.9万円、営業373万円 比較的控えめ
主なストレス要因 頭脳労働、ノルマ、複雑な人間関係 体力面での負荷が中心
求められるスキル デジタル対応、専門知識、営業力 基本的な作業スキル
仕事の自由度 営業は高いが成果圧力あり 時間や場所の選択肢が多い
精神的負担 常に高い成果が求められる 完了すれば達成感を得やすい

定年後に求められる”貢献・健康”を実現する低ストレス職種の選択肢

警備員・調理・清掃員が示す「無理なく働く」モデルの実態

定年後のストレスが少ない仕事として、警備員、調理、清掃員といった職種が調査で明らかになった。これらの職種に共通するのは、仕事の負荷が比較的少なく、職場での精神的な不調をきたす人が他の職種に比べて少ないという点である。研究員は、これらの職種が定年後の新しい働き方のモデルを示していると評価している。

警備員の仕事は、一定の体力や労働時間は必要であるものの、仕事の精神的負荷が少ないという特徴がある。アンケート調査では「ストレスのある仕事ではない」「人間関係の煩わしさがない」というコメントが多く見られた。単独での業務が多く、複雑な対人関係に悩まされることが少ない点が、ストレス軽減につながっている。ただし、配属される現場によって仕事の質や量に差があり、場所によっては危険や緊張感があるため、就職先がどのような現場を取り扱っているか事前に確認することが重要である。

調理の仕事も、仕事の自由度が高く、勤務日や勤務時間を選びやすいことから、仕事の負荷やストレスが総じて低いという特徴を持つ。調理師を対象とした調査では、仕事の良い点として「自分の作った料理を美味しいと食べてもらえることが嬉しい」というコメントが多く見られた。料理を通じて直接的な感謝を受け取れることが、精神的な充実感につながっている。創作の喜びと人々の笑顔が、日々の働く原動力となっているのである。

清掃員の仕事については、限られた時間内でやるべき作業が多く、仕事の密度は高いという側面がある。しかし労働時間が短く、「清掃してきれいになるのは気持ちいい」「身体を動かすので健康によい」という意見が多かった。目に見える成果が得られることと、適度な運動が健康維持につながることが、この仕事の大きな魅力となっている。作業の開始時と終了時の変化が明確であることが、達成感を感じやすい要因となっている。

これらの低ストレス職種に共通するのは、仕事の成果が目に見えやすく、達成感を得やすいという点である。警備員は施設の安全を守り、調理師は美味しい料理を提供し、清掃員はきれいな環境を作り出す。それぞれの仕事が社会に対する明確な貢献を伴っており、この「貢献感」が精神的な満足度を高めている。高収入ではないかもしれないが、心の豊かさを得られる選択肢として、定年後の就業者から支持を集めている。

体験フローで見る定年後の仕事選び

定年前の準備 → 自己分析(体力・気力・価値観の確認) → 職種研究(収入・ストレス・労働時間の比較) → 応募・面接(自身の経験と希望のマッチング確認) → 試用期間(実際の負荷とストレスの確認) → 本格就業(健康状態と仕事のバランス調整) → 定期的な見直し(継続可能性の判断)

定年後の仕事選びに関するFAQ

Q1: 定年後の仕事は全体的にストレスが少ないと言われるのはなぜですか?
A1: 高齢期の就業者は現役世代ほどストレスを感じていないことがデータから明らかになっています。現役世代は自身の能力に対して仕事の負荷が重すぎると感じる傾向がありますが、定年後は仕事における過度な負荷から解放されます。働く時間も短めで、仕事の難易度や量、責任もさほど大きくないため、無理なく働いている方が多いのです。

Q2: 事務職が定年後でもストレスが高いのはどのような理由からですか?
A2: 事務職のストレス要因として、仕事の難しさや複雑な人間関係の多さが挙げられます。事務の仕事は「頭を使う」割合や「ほかの人と一緒に行う」割合が高く、週に35〜42時間働く人が36.1%と、フルタイムに近い働き方をする傾向があります。また、最新のデジタルツールへの対応など、新しい知識へのキャッチアップが必要となる点もストレスにつながっています。

Q3: 営業職で定年後も働く場合、どのような点に注意すべきですか?
A3: 営業職は平均年収373万円と高収入ですが、常に成果・ノルマへのプレッシャーがあります。定年後であっても数字による評価から逃れられず、これが大きなストレス要因となっています。また、現役の頃からの経験を活かして仕事をする側面が強く、定年後に新たに始めるのはハードルが高い職種です。高収入を得られる一方で、相応の負荷があることを理解しておく必要があります。

Q4: ストレスが少ない職種として警備員が挙げられていますが、注意点はありますか?
A4: 警備員の仕事は総じて仕事の負荷が少なく、人間関係の煩わしさも少ないとされています。しかし、配属される現場によって仕事の質や量に大きな差があります。場所によっては危険や緊張感を伴う現場もあるため、就職先がどのような現場を取り扱っているか、事前にしっかり確認することが重要です。

Q5: 定年後の仕事を選ぶ際に最も重視すべきポイントは何ですか?
A5: 定年後は現役時代の「達成・出世」という価値観から、「貢献・健康」を大事にする価値観へとシフトしていきます。無理なく健康を維持し、社会とつながりながら働くために、報酬だけでなくストレスや負荷のバランスを考慮することが大切です。ご自身の気力や体力、そして仕事に対する新しい価値観と照らし合わせて選択することが、豊かな老後につながります。

■ 定年後の仕事選びまとめ
項目 内容
調査の発見 定年後は現役世代より総じてストレスが少ない傾向
高ストレス職種 事務職(平均年収237.9万円)、営業職(平均年収373万円)
高ストレス要因 頭脳労働、ノルマ圧力、長時間労働、デジタル対応
低ストレス職種 警備員、調理、清掃員
低ストレス要因 仕事の成果が見えやすい、達成感、社会貢献感
価値観の変化 「達成・出世」から「貢献・健康」へのシフト
選択のポイント 報酬だけでなくストレス・負荷のバランスを考慮
今後の課題 AIの発達による事務職需要の減少

専門家が示した「小さな仕事」が導く豊かな老後の戦略

リクルートワークス研究所の研究員が提唱する「小さな仕事」という概念は、定年後の働き方に新しい視点をもたらしている。この考え方は、高収入や地位といった現役時代の価値基準から離れ、無理なく健康を維持しながら社会とつながることを重視する。物価上昇や年金支給額の実質的な目減りという経済的な課題がある一方で、心身の健康という資本を守りながら働くことの重要性が強調されている。

調査データが示すのは、定年後の就業者が「達成・出世」から「貢献・健康」へと価値観をシフトさせている現実である。現役時代は昇進や年収の増加といった分かりやすい成功指標があったが、定年後はそれらの指標が意味を持たなくなる。代わりに、自分の仕事が社会にどう役立っているか、健康を維持しながら働けているか、といった基準が重要になる。この価値観の転換は、人生の新しい段階における自然な変化であり、無理に抗う必要はないと研究員は指摘している。

「小さな仕事」の本質は、規模や収入の大小ではなく、自分自身の心身の状態と仕事のバランスが取れているかという点にある。月10万円という収入は決して多くはないが、年金と合わせることで豊かな暮らしを実現できる可能性がある。高収入を追求して心身を消耗させるよりも、適度な収入で健康を維持し、趣味や家族との時間を大切にする生活の方が、真の豊かさにつながるという考え方である。

調査が明らかにしたのは、定年後の仕事選びにおいて、過去の経験やスキルだけでなく、現在の自分の状態を冷静に見つめることの重要性である。現役時代に事務職や営業職で活躍した人が、定年後も同じ道を選ぶとは限らない。むしろ、警備員や調理、清掃員といった、一見地味に見える仕事の中に、ストレスが少なく社会貢献を実感できる働き方があることを、データは示している。

定年後の人生は、まだ長い時間が残されている。65歳から80歳まで働くとすれば15年間、85歳まで働けば20年間の時間がある。この長い期間を、ストレスにさらされながら過ごすのか、それとも無理なく健康を維持しながら社会とつながり続けるのか。研究員が示した調査結果は、後者を選ぶための具体的な選択肢と、その選択が決して妥協ではなく、むしろ賢明な戦略であることを教えてくれている。後悔のない選択をするために、自分自身の気力や体力、そして仕事に対する新しい価値観と真剣に向き合うことが、今、求められている。

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