正月の風物詩である箱根駅伝。選手の快走とともに注目を集めるのが、その足元を支えるシューズのシェア争いです。かつて日本の足元を支えた国内2大巨頭、アシックスとミズノですが、近年の決算を見ると両社の業績には明確な「差」が生まれています。一時は海外メーカーに押され苦境に立たされた日本企業ですが、なぜアシックスは過去最高益を叩き出し、ミズノとの差を広げることになったのでしょうか。戦略の違いがもたらした結果について、あなたも疑問に思ったことはありませんか?本記事では、この両社の明暗を分けた背景と、スポーツシューズ市場の現状を深く掘り下げていきます。
この記事のポイント
- アシックスは「選択と集中」でランニング事業に経営資源を投下
- ミズノは多角的なスポーツ展開を維持しつつ業務改善を継続
- 2024年12月期のアシックスは営業利益1,000億円超の過去最高水準
- 箱根駅伝を起点とした「厚底シューズ」開発競争がブランド価値を左右
1. 概要(何が起きたか):アシックスとミズノの業績差が鮮明に
近年のスポーツ用品業界において、日本を代表する「アシックス」と「ミズノ」の業績格差が注目されています。2024年12月期の連結業績予想において、アシックスは売上高6,785億円、営業利益1,001億円という驚異的な数字を叩き出しました。これは同社にとって過去最高水準の利益率となります。
対するミズノも、過去の苦境からは脱却し、2018年以降は営業利益を大幅に改善させています。しかし、売上規模や利益の「額」そのものを比較すると、アシックスの背中は遠のいているのが現状です。かつてはライバルとして拮抗していた両社ですが、現在は経営戦略の方向性の違いが、数字として如実に現れています。
2. 発生の背景・原因:決定的だった「選択と集中」の有無
この差が生まれた最大の原因は、2000年代前半からの戦略決定にあります。当時のアシックスは、少子化による野球人口の減少やゴルフ市場の縮小を背景に、大胆な「選択と集中」を行いました。具体的には、学校体育用品やゴルフ、水泳といった不採算に近い事業から次々と撤退し、世界的に需要が見込める「ランニング」へリソースを全集中させたのです。
一方のミズノは、野球、ゴルフ、水泳、さらにはライフスタイル全般と、幅広い競技を網羅する「総合スポーツメーカー」としての道を歩み続けました。この多様性が強みとなる局面もありましたが、グローバルな成長スピードという点では、一点突破を選んだアシックスに軍配が上がった形です。
3. 関係者の動向・コメント:現場が語るシューズへのこだわり
メーカー関係者によると、箱根駅伝は単なる宣伝の場ではなく、開発力の証明書だといいます。かつてナイキの「厚底旋風」によってアシックスの着用率がゼロに近づいた際、社内では相当な危機感があったとされています。そこから「メタスピード」シリーズなどの高機能シューズを短期間で開発し、シェアを奪還した執念が、現在の好業績を支えています。
ミズノの関係者も、伝統の「モレリア」シリーズなどに代表される高い技術力を誇りにしていますが、ランニング市場における爆発的なトレンド形成においては、アシックスのマーケティング力に一日の長があったとの見方も業界内では根強いです。
4. 被害状況や金額・人数:市場規模と営業利益の圧倒的開き
具体的な数字で見ると、その差は歴然です。2017年3月期、ミズノの売上高は約1,800億円に対し、営業利益はわずか14億円程度(利益率1%以下)でした。その後、80億円規模まで回復させたものの、同時期のアシックスは売上高4,000億円超、営業利益195億円を記録していました。
現在では、アシックスの営業利益が1,000億円の大台に乗る一方で、ミズノは依然としてその数分の一の規模に留まっています。この「利益創出力の差」が、次の研究開発や広告宣伝への投資余力となり、さらなる差を生むという循環に入っています。
5. 行政・警察・企業の対応:知財戦略とグローバル展開
企業側の対応として特筆すべきは、特許などの知財戦略とグローバルなサプライチェーンの再編です。アシックスは欧米市場でのブランド地位を確立するため、現地のランニングコミュニティへの投資を惜しみませんでした。また、経営陣は在庫圧縮や不採算部門の整理を断行し、高収益体質を作り上げました。
ミズノも同様に米州事業の再編や在庫圧縮に取り組み、2018年には営業利益を前年比5.5倍にするなどの業務改善を見せましたが、それは「マイナスをゼロに戻す」要素が強く、アシックスのような「ゼロからプラスへ爆発させる」成長曲線とは性質が異なりました。
6. 専門家の見解や分析:カテゴリーキラーとしての強さ
経済アナリストの分析によれば、アシックスの成功は「カテゴリーキラー」としての地位を確立したことにあります。「ランニングといえばアシックス」という強いブランド想起を世界中で作り上げたことが、高価格帯シューズの販売増につながりました。一方、ミズノの多角化戦略は、国内の部活動需要などには強いものの、グローバルな爆発力に欠ける側面があると指摘されています。
7. SNS・世間の反応:ユーザーが抱くブランドイメージ
SNS上では、箱根駅伝の放送中に「アシックスの盛り返しがすごい」「ミズノの青いシューズも格好いいけど、履いている人が少ないのが気になる」といった声が多く聞かれます。また、かつてアシックスのスパイクを愛用していた層が、現在は健康維持のためのランニングシューズとして同社製品を再び購入する「回帰現象」も起きているようです。
8. 今後の見通し・影響:次なる戦場はライフスタイル市場
今後の展望として、アシックスはランニングで培った技術を「オニツカタイガー」などのファッション・ライフスタイル領域へ転化し、さらなる高収益化を狙っています。ミズノも高機能素材を用いたワークシューズ(作業靴)市場などで健闘しており、スポーツ以外の領域でどこまで存在感を示せるかが、今後の業績の差を縮める鍵となるでしょう。
9. FAQ:よくある疑問
Q1:アシックスの方がミズノより優れているということですか?
A1:製品の優劣ではなく、経営戦略の違いです。アシックスは「ランニングへの集中」で急成長し、ミズノは「幅広い競技のサポート」という総合力を重視しています。
Q2:なぜ箱根駅伝のシューズが業績に関係するのですか?
A2:トップランナーの着用率はブランドイメージに直結し、それが世界中の一般ランナーの購買意欲に影響を与えるため、マーケティング上の重要拠点となっています。
10. まとめ
アシックスとミズノの業績の差は、過去20年間の「選択と集中」の結果であると言えます。ランニングという巨大市場にリソースを絞ったアシックスが、現時点では収益性において圧倒的な勝利を収めています。しかし、ミズノの持つ多角的な技術力も、新たな市場(ワーク用品など)で芽吹きつつあります。箱根駅伝の足元から見えるこの戦いは、日本企業の生き残り戦略を象徴する縮図と言えるでしょう。
