- 退職代行「モームリ」運営会社の社長と妻が弁護士法違反容疑で逮捕
- 報酬を得る目的で、法律事務(退職交渉)を弁護士へ紹介した疑い
- 累計4万人以上の利用者がおり、業界最大手の一角として知られていた
- 非弁行為(弁護士以外が交渉すること)の境界線が改めて浮き彫りに
1. 退職代行「モームリ」社長夫妻逮捕の概要
2026年2月3日、警視庁は退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスの社長(37)と、その妻で従業員の女性(31)を弁護士法違反の疑いで逮捕しました。
逮捕容疑は、弁護士資格を持たないにもかかわらず、報酬を得る目的で退職交渉に関する法律事務を弁護士に紹介(あっせん)したというものです。警察は昨年10月の段階で、東京・品川区にあった旧本社や社長の自宅、関係先の弁護士事務所などを家宅捜索しており、慎重に捜査を進めてきました。数万人の利用者を抱える大手運営者の逮捕は、代行業過渡期における象徴的な事件といえます。
2. 発生の背景・原因:なぜ「紹介」が罪になるのか
今回の逮捕理由は、弁護士法第72条および第74条に関連する「非弁提携」および「非弁活動のあっせん」に抵触した疑いです。日本の法律では、弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事務(交渉など)を取り扱うことや、その仕事を弁護士に紹介して紹介料を得ることを厳しく禁じています。
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背景には、退職代行サービスの急激な需要拡大があります。本来、会社との「交渉(有給消化の交渉や退職日の調整)」は弁護士しか行えません。民間の代行業者はあくまで「意思の伝達」に留まる必要がありますが、依頼者の要望に応える過程で、提携弁護士へ仕事を回し、その見返りとして不適切な報酬のやり取りがあった可能性が指摘されています。
3. 関係者の動向・警察の動き
警視庁は、押収した資料やPCの解析から、運営会社と複数の弁護士事務所との間に不透明な資金の流れがあったとみています。具体的には、依頼者から受け取った代金の一部が、実質的な「紹介料」として処理されていたかどうかが焦点です。
また、捜査対象は社長夫妻だけにとどまりません。不適切な紹介を受けていたとされる弁護士側についても、弁護士法違反(非弁提携)の共犯関係にあるとして、警視庁は慎重に裏付け捜査を行っています。昨年10月の家宅捜索時、社長は周囲に対し落ち着いた様子を見せていたと報じられていますが、警察は長期間の任意捜査を経て逮捕に踏み切りました。
4. 被害状況や影響人数:累計4万人の利用者はどうなる?
「モームリ」は2022年の事業開始以来、急速にシェアを伸ばしました。安価な料金設定とSNSを活用したプロモーションにより、若年層を中心に支持され、累計利用者数は4万人を突破していたとされます。
現在、サービスを利用中、あるいは過去に利用した方々からは「自分の退職は有効なのか」「預けた個人情報は大丈夫か」といった不安の声が上がっています。原則として、既に完了した退職手続きが無効になる可能性は低いと考えられますが、現在進行中の案件については、サービスの中断や法的トラブルへの発展が懸念されます。
5. 行政・警察・企業の対応
警視庁は今後、会社組織としての実態や、他の退職代行業者との関わりについても調べる方針です。また、労働行政の観点からも、民間業者による退職代行が「どこまで許容されるか」のガイドライン策定や監視強化が求められる局面に来ています。
企業側(雇い主側)も、これまでは「退職代行からの連絡」に対して一律に対応してきましたが、今後は相手が弁護士なのか、それとも非弁行為を行う業者なのかをより厳格に確認する動きが強まると予想されます。不適切な業者を介した退職届を受理拒否するケースが増える可能性もあります。
6. 専門家の見解:退職代行業界の「闇」
労働法に詳しい弁護士や専門家は、「この事件は氷山の一角に過ぎない」と警鐘を鳴らしています。退職代行には主に3つの形態(1.弁護士、2.労働組合、3.民間業者)がありますが、民間業者が「交渉」に踏み込むのは明確な違法行為です。
専門家によれば、民間業者が「提携弁護士がいるから安心」と謳いながら、実際には業者が主体となって交渉を行い、名前だけ弁護士を貸しているようなケース(名義貸し)や、今回のような不適切な紹介料が発生しているケースが後を絶たないといいます。今回の逮捕は、グレーゾーンで運営を続けてきた業界全体に対する「最後通告」とも取れます。
7. SNS・世間の反応:便利さの裏にあるリスク
ネット上では、様々な意見が飛び交っています。 「会社が辞めさせてくれないから助かっていたのに、逮捕されると困る」 「4万人も利用者がいて、これまで問題にならなかったのが不思議」 「結局、安いものには裏がある。最初から弁護士に頼むべきだった」
特に、モームリはSNSでの発信力が強く、社長自身が顔出しでメディアに登場することも多かったため、そのギャップに驚く声が目立ちます。また、「ブラック企業から救ってくれるヒーロー」として見ていた層からは、落胆の声も聞かれます。
8. 今後の見通し・業界への影響
今回の逮捕を受け、退職代行業界の再編は避けられないでしょう。法令遵守(コンプライアンス)が徹底されていない中小業者の淘汰が進み、よりクリーンな運営が求められるようになります。
また、利用者の視点も変わります。「安さ」や「手軽さ」だけでなく、「その業者が法的に安全か」という点が重視されるようになるでしょう。今後は、労働組合運営を謳う業者や、弁護士事務所が直接運営するサービスへのシフトが進むと考えられます。裁判の行方次第では、退職代行というビジネスモデルそのものの在り方が法的に制限される可能性も否定できません。
9. FAQ(よくある質問)
Q:モームリで退職したのですが、会社に戻らなければなりませんか?
A:いいえ。退職届が受理され、会社側もそれを認めて退職処理が完了している場合、その有効性が直ちに否定されることは考えにくいです。ただし、特段のトラブル(損害賠償請求など)がある場合は弁護士に相談してください。
Q:他の退職代行サービスも危ないのでしょうか?
A:全ての業者が違法ではありません。弁護士自身が業務を行う場合や、労働組合が団体交渉権に基づいて行う場合は適法です。民間業者が「交渉」を行っている場合は注意が必要です。
Q:今後、退職したい場合はどうすればいいですか?
A:トラブルを避けるなら、まずは自身で退職届を出すか、難しい場合は「弁護士」が直接運営するサービスを選択することをお勧めします。
10. まとめ
退職代行「モームリ」の社長夫妻逮捕は、急成長する代行業界に潜む法的なリスクを露呈させました。報酬目的の弁護士紹介は、司法の公平性を損なう重大な違反行為とみなされます。利用者は「手軽さ」の代償として、知らぬ間に違法行為に加担させられていないかを見極める必要があります。労働者の権利を守るためのサービスが、法を犯しては本末転倒です。今後は業界の浄化と、より健全な労働環境の構築が望まれます。

