冬に入ると急増するノロウイルス。今年は静岡県内で食中毒件数が大きく伸び、熱海市では宿泊・飲食業の関係者を対象に講習会が開かれた。熱海保健所の担当者は「感染しても症状が出ない場合があるため、本人が気づかないまま感染を広げる可能性がある」と強く注意を促した。特に飲食店では“症状のない調理者”が最大の感染源になることが多く、冬季は例年以上に警戒が必要だ。この記事では、無症状感染の仕組み、食中毒増加の背景、家庭と職場でできる対策まで詳しく解説する。
ノロウイルス食中毒が急増 症状がなくても感染源になる危険性
静岡県熱海市で11月25日、ノロウイルスによる食中毒を防ぐための講習会が開かれ、宿泊施設・飲食店などの事業者およそ180人が参加した。熱海保健所の担当者は「ノロウイルスは感染しても症状が出ない場合がある」と述べ、無症状の調理者による二次感染が非常に多いと説明した。
2025年、静岡県内で発生した食中毒は21件・717人と、前年(13件・315人)から大きく増加。コロナ禍の衛生意識が落ち着き、手洗い・消毒習慣が緩んだことも背景にあるとみられている。
■ 講習会の基本情報
関連記事
| 開催日 | 2025年11月25日 |
|---|---|
| 場所 | 静岡県熱海市 |
| 参加者 | 宿泊・飲食事業者 約180人 |
無症状感染の仕組み “気づかないまま感染を広げる人”が多い理由
ノロウイルスは感染力が非常に強い。わずか数十個のウイルスで発症し、トイレ後の手やドアノブなど、家庭内の小さな接触でも簡単に広がる。
さらに厄介なのが「無症状感染者」の存在だ。感染しているにもかかわらず、吐き気・下痢・発熱などが全く出ない人が一定数おり、本人が体調に問題を感じないため、普段どおり出勤・調理・接客をしてしまう。このような無症状の人でも排泄物や手指にウイルスが残り、食材や器具に触れることで二次感染が起きる。
熱海保健所の担当者も「飲食店で起きるノロウイルス食中毒の多くは、調理従事者が感染源」と説明。症状が出ないために気づきにくく、潜在的なリスクは高い。
食中毒件数が昨年の2倍以上に増加 コロナ前の水準に戻った背景
静岡県によると、2025年の食中毒件数は前年の2倍以上に増えている。原因として指摘されているのは以下の3点だ。
1. コロナ禍で高まっていた衛生意識が低下した
2. 観光需要が回復し、人流と飲食機会が増えた
3. 人手不足により調理現場の衛生管理が乱れやすい
とくに飲食店では、繁忙期の冬に向けて人手が不足し、体調不良者も「休めない」と無理して勤務するケースが問題視されている。
■ 昨年と今年のノロウイルス食中毒比較
| 項目 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 発生件数 | 13件 | 21件 |
| 患者数 | 315人 | 717人 |
| 主な原因 | 調理者の衛生不良 | 無症状感染+管理不足 |
見えない感染が広がる季節 家庭でも飲食店でもリスクが高まる理由
冬季は湿度が低く、ウイルスが乾燥した環境で長く生き残るため、接触感染が起きやすい。ノロウイルスはアルコールに強く、一般的な消毒では十分に不活化できない点も特徴だ。
特に次のような環境で感染が拡大しやすい:
・家庭内のトイレやドアノブ
・共用タオル、洗面所
・飲食店の調理場
・宿泊施設の清掃時
ひとりの手指についたウイルスが数十人へ広がるのは珍しくなく、担当者は「体調不良のときは調理に入らないことが最優先」と訴えた。
今日からできる予防フロー “手を介した感染”を防ぐ行動導線
① 帰宅後すぐに30秒の手洗い
→ ② 調理前・食事前に必ず手洗い
→ ③ トイレ後は指先・爪の間を念入りに洗う
→ ④ 85〜90℃で90秒以上の加熱調理
→ ⑤ 嘔吐物処理は使い捨て手袋+漂白剤で消毒
→ ⑥ 家族に症状が出たらタオル類を分ける
→ ⑦ ドアノブ・便座は次亜塩素酸ナトリウムで拭く
FAQ:ノロウイルスの疑問をまとめて解説
- Q1. 無症状でも感染を広げる?
A. はい。症状がなくてもウイルスを排出し、食材や器具を通じて感染する。 - Q2. アルコール消毒は効く?
A. ほとんど効果がない。漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)が必要。 - Q3. 牡蠣は食べても問題ない?
A. 十分に加熱すれば安全だが、生食はリスクが高い。 - Q4. いつ病院へ行けばいい?
A. 脱水症状が強いとき、乳幼児・高齢者は早めに受診を推奨。 - Q5. 家族内感染を防ぐ方法は?
A. 手洗い・タオル分離・トイレ消毒の3点が最重要。
まとめ表:ノロウイルスの現状と季節対策
■ ノロウイルス増加の総括
| 現状 | 県内の食中毒は717人で前年の2倍以上 |
|---|---|
| 主な原因 | 無症状感染者+衛生意識の低下 |
| 最大のリスク | 症状のない調理者が感染を広げること |
| 対策 | 手洗い・加熱調理・体調管理の徹底 |
見えないウイルスと向き合う冬 私たちが備えるべき“季節の常識”
ノロウイルスの怖さは、「症状がない人でも感染を広げてしまう」という点にある。体調に異変を感じないまま調理・接触を行い、その結果、家庭や職場で一気に広がることも珍しくない。
熱海保健所の担当者が何度も強調したように、最も効果のある対策は“手洗い”と“体調不良時は調理しないこと”。基本的なルールを守るだけで、感染リスクを大幅に下げることができる。
冬の感染症は目に見えないが、行動を少し変えるだけで防ぐことができる。食中毒が増える季節だからこそ、日常の衛生習慣を改めて見直すことが大切だ。
