1. ニュース概要:過去最多を更新した「人手不足倒産」の実態
帝国データバンク(TDB)の最新調査によると、2025年における「人手不足倒産」(法的整理、負債1,000万円以上)は年間で427件に達し、過去最多を更新しました。前年の342件から約25%も増加しており、初めて400件の大台を突破した形です。
特に深刻なのが、日本のインフラを支える「建設業」と「物流業」です。建設業は113件、物流業は52件といずれも過去最多を記録しました。これらの倒産は、仕事(需要)がなくなったから潰れる「不況型倒産」とは性質が異なります。注文はあるのに、それを受けるための「人」を確保できず、資金繰りが行き詰まるケースが目立っています。
2. 発生した背景・社会的要因:働き方改革の副作用
人手不足倒産はなぜ増えたのか、その最大の背景にあるのが「働き方改革」に伴う労働時間の制限です。いわゆる「2024年問題」が本格的に現場を直撃しています。これまで建設・物流の現場は、長時間労働によってなんとか業務を回してきました。しかし、2024年4月から時間外労働の上限規制が厳格に適用されたことで、「残業でカバーする」という従来のビジネスモデルが物理的に不可能になりました。
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また、単なる労働規制だけでなく、構造的な「採用難」と「人件費高騰」が重なっています。若年層の入職者が減る一方で、熟練工のリタイアが進み、少ない人材を奪い合うために賃金を上げざるを得ない状況が、経営を圧迫しています。
3. 影響を受けた生活者・地域の声
この「現場崩壊」は、私たちの日常生活にも波及しています。「これまで翌日に届いていた荷物が届かなくなった」「再配達の制限が厳しくなった」という消費者の声や、地方自治体の公共事業で入札不調が相次ぎ、道路の修繕が計画通り進まないといった事態が起きています。地元の小さな建設会社が倒産することで、冬場の除雪作業や緊急時の災害復旧を担う担い手がいなくなることを危惧する地域住民も少なくありません。
4. 金額・人数・生活負担への影響:小規模企業の限界
- 企業規模: 倒産した企業の77.0%が従業員10人未満の小規模事業者。
- 属人化のリスク: 1人欠員が出るだけで事業が止まる脆い組織構造。
- コストの二重苦: 燃料費・資材費の高騰に加え、採用のための人件費が上昇。
10人未満の企業では、キーマンが1人辞めるだけで工程表や運行計画が崩壊します。代わりの人員を募集しても、大企業のような賃金アップが提示できないため、採用できずにそのまま「操業停止」へと追い込まれる負のループに陥っています。
5. 行政・自治体・関係機関の対応
政府や自治体は、上限規制の適用に際し、一部で緩和措置を継続していますが、根本的な解決には至っていません。現在、行政が注力しているのは「価格転嫁」の促進です。下請け企業が人件費の上昇分を元請けや荷主に適切に請求できるよう、取引の適正化を指導しています。しかし、立場が弱い小規模事業者にとって、この交渉は依然として高いハードルとなっています。
6. 専門家の分析:経営指標としての「人」の欠如
専門家は、近年の人手不足倒産を「単なる外部環境のせいだけではない」と指摘します。倒産に至る企業には、共通して経営管理の遅れが見られます。自社の運行や現場あたりの正確な粗利を把握できておらず、赤字受注を続けていたケースです。2024年問題という「テスト」によって、これまで無理な残業で隠してきた経営の弱点が露呈したといえます。防げないのではなく、防ぐための経営改善を後回しにしてきたツケが回ってきた形です。
7. SNS・世間の反応:現場と家庭の悲鳴
SNS上では、現場で働く人々やその家族からの切実な投稿が目立ちます。「旦那が運送業だけど、拘束時間は短くなったのに給料が激減した。会社も苦しそうでいつ潰れるか不安」といった声や、「近所の工務店が廃業してリフォームの相談先がなくなった」という困惑が広がっています。ネット上では「給料を上げられない会社は淘汰されるべき」という厳しい意見がある一方で、私たちの生活基盤を支えるエッセンシャルワーカーが消えていくことへの恐怖心も強まっています。
8. 今後の見通し:2026年も続く「選別」の時代
2026年も、人手不足倒産の増加傾向は続くと予想されます。特に「賃上げ難型」の倒産が加速するでしょう。大企業が大幅なベースアップを行う中、それに追随できない中小企業からは、さらに人材が流出するからです。今後は、建設・物流だけでなく、介護や警備、美容といった労働集約型のあらゆる業種で、企業の淘汰が進む「選別の時代」に突入します。

