“トマトショック”でカレーも直撃 価格2.4倍の衝撃

スーツ姿の大人たちに囲まれながら、カワウソが和食テーブルで食の安全を指導しているイラスト
トマトの価格がかつてない水準に達しています。
日本農業新聞によると、2025年11月現在、全国平均価格は1kgあたり1225円。 平年の2.4倍という驚異的な高騰で、“トマトショック”と呼ばれる現象が広がっています。

家庭料理の定番であるカレーや外食チェーン、トマト料理専門店までもが直撃を受けており、 「トマトが高すぎて仕入れられない」という悲鳴が現場から相次いでいます。 この記事では、主要産地・熊本県の被害状況、流通の混乱、飲食業界の対応策、 そして「食卓のインフレ」がもたらす日本の食文化への影響を、専門家の視点も交えて詳しく解説します。


この記事で得られる情報

トマト価格が過去最高に 熊本の豪雨が深刻な影響

2025年8月、熊本県を中心とする九州地方は、記録的な線状降水帯の発生により、 1週間にわたる豪雨に見舞われました。主要なトマト産地である八代市や菊池市ではハウスが水没し、 一部の農家では全滅に近い被害を受けたといいます。 出荷量は前年同期の6割にまで落ち込み、市場価格は一気に上昇。 卸売市場では1kgあたり1225円という史上最高値を記録しました。 農家の一人は「設備の再建に数百万円単位の費用がかかる。 来季の作付けを諦める農家も出ている」と話し、長期的な供給不安も指摘されています。 さらに、輸送ルートの一部が土砂災害で寸断され、流通コストの上昇が追い打ちをかけました。 JA熊本経済連によれば、トマトは地元スーパーでも小売価格が1個300円前後まで上昇し、 平年比約2.5倍という“異常価格”が続いています。

“万能食材”トマトが高すぎて手が出ない 飲食店の悲鳴

都内の人気トマト料理専門店「TOMATO×TOMATO DE LUCE」では、 トマトを使ったメニューが10品以上あります。サラダ、パスタ、ビーフシチュー、スープ、 さらにはトマトを使用したデザートまでそろえる“トマト尽くし”が売りですが、 この夏以降、仕入れコストの上昇で経営を直撃しました。 店長のアモビ・アタネシウスさんは「以前は1個100円だったトマトが、 今は300円近い。利益がほとんど出ない」と語ります。 それでも価格を上げすぎれば客離れにつながるため、店側は苦しい判断を迫られています。 一部では、輸入トマトの活用や冷凍トマトへの切り替えも進んでいますが、 「風味が落ちる」「色味が変わる」など品質面の課題が残ります。 SNS上では「トマトジュースの方が安い」「家では代用している」といった声も多く、 消費者の節約志向も強まっています。

カレー専門店にも波及 “食卓の味方”がピンチに

東京・神田のスープカレー専門店「カムイ」では、開店15年で初めて全メニューを値上げしました。 店主の諸橋宏明さんは、「トッピングもドリンクも全部値上げせざるを得なかった。 これまで一度も価格を動かしたことがなかったが、原価が跳ね上がっている」と打ち明けます。 特に影響を受けたのはスープのベース。これまで生トマトを仕入れて仕込んでいたものの、 2025年3月以降はコストを抑えるためトマトジュースへ切り替え。 「味の深みが少し変わった」「コクの出し方を工夫している」と、現場での試行錯誤が続いています。 店舗では、11月からカレー全品を90円値上げし、トッピングは110円〜220円アップ。 “食卓の味方”とされてきたカレーも、原材料の高騰に耐えきれなくなっているのが現状です。

家庭のカレーにも打撃 「カレー物価」は過去最高水準

総務省が毎月公表している「カレーライス物価」では、 2025年9月の1食あたりの調理コストが438円と、前年同月比で74円上昇しました。 10月は460円台が見込まれており、過去最高水準が続く見通しです。 主な要因はトマトだけでなく、玉ねぎやにんじん、じゃがいも、牛肉など 複数の原材料が同時に値上がりしていること。さらに光熱費やガス代も上昇しており、 「家カレー」が“安い定番料理”でなくなりつつあります。 家計調査によると、家庭のカレー関連支出額は前年比で約12%増。 SNS上では「カレーを作るよりレトルトの方が安い」「週末カレーが贅沢になった」など、 嘆きの投稿が相次いでいます。

外食産業の対応 代替素材や仕入れ多様化がカギ

飲食業界では、仕入れ先の多様化が急務となっています。 トマトジュース、ペースト、冷凍カットなど加工品の利用が進む一方で、 品質を保ちながらコストを抑えるにはノウハウが求められます。 都内チェーンの経営者は「国産が高いなら海外産を混ぜるしかないが、 味が違うと言われてしまう」と苦悩を語ります。 一方、農水省は「国産農家を支援しながら、安定供給体制を整える」方針を示しており、 今後は気候変動に強い栽培方法や施設投資への補助も検討されています。 また、飲食業界ではAIを活用した需給予測や、契約農家との直接取引を強化する動きも見られます。 “食の安定”を支える技術革新が、静かに始まっているのです。

FAQ

Q1: トマト価格が上昇した原因は?
A1: 熊本県などの主要産地が豪雨で甚大な被害を受け、出荷量が減少したため。流通網の寸断や燃料費の高騰も要因です。

Q2: どのくらい値上がりしている?
A2: 平年の約2.4倍で、1kgあたり1225円。1個あたりの小売価格は200〜300円前後まで上昇しています。

Q3: 外食店はどう対応している?
A3: トマトジュースや冷凍加工品への切り替え、輸入トマトの利用、価格改定などで対応していますが、味の再現性に苦労しています。

Q4: 家庭のカレー価格は?
A4: 全国平均で1食438円(9月時点)。家庭の定番料理にも「食材インフレ」が波及しており、調理頻度が減る傾向にあります。

Q5: 今後価格は下がる?
A5: 出荷が回復するのは来春以降とみられ、年内は高値が続く見通し。天候次第で再び高騰する可能性もあります。



まとめ|“トマトショック”が映す気候と食のリスク

今回の“トマトショック”は、単なる価格変動ではなく、 気候変動と物流不安が同時に襲った「複合型食材危機」と言えます。

家庭では代替食材の工夫、飲食店では仕入れ戦略の再構築が求められており、 “食の安全保障”が現実の課題として浮かび上がっています。

トマト1個の値上がりが示すのは、私たちの食生活がどれほど自然条件に依存しているかという事実。 安定した供給体制を守るためには、農業・企業・消費者が一体となった持続可能な仕組みづくりが不可欠です。


外部参考情報
[公式発表]:FNNプライムオンライン「“トマトショック”がカレーも直撃」(2025年11月12日)
[専門分析]:日本農業新聞「トマト価格2.4倍に上昇、熊本豪雨の影響深刻」
[関連法規]:農業災害補償法/農業共済制度(農林水産省)

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